会社の目標って、コーチングの対象になるの? 私がコーチングをする理由


企業のコーチング導入は進んでいる!

 企業からの依頼でコーチングをするケースは増えています。現在、多数のコーチングファームが依頼を受けて、企業の人材育成の一部を担っています。 VUCA時代においては、指示を待って動く人材よりも、自律している人材が求められます。環境の変化に対応するには、主体的に考え、自ら判断して動く人材が必要なのです。コーチングによる人材育成はこの時勢にフィットしていると言えます。

上司からの依頼で行うコーチングは、コーチングなのか

しかし、コーチングとはクライアントが本当にやりたいことに対して、対話を通じて、伴走していくものです。上司からの依頼ってコーチングになるのでしょうか。

 ICF(国際コーチング連盟)では、このケースのコーチングは成立すると考えます。上司とクライアントの間で目標に対して合意し、クライアントがコーチングを受けることを希望しているのならば、本人が希望していると解釈し、契約できます。

 一方、会社の依頼によるコーチングは本質的にはコーチングではない、する意見もあります。下記の著書「リーダーシップ・マスター」に記述があります。会社からの依頼で行われる「コーチングはコンサルティングに含まれる」と解釈しています。もし、コーチングの内容を上司に報告しなくてもよいのであれば、コーチングといえる、との事です。(英知出版 リーダーシップ・マスター マーシャル・ゴールドスミス 他)

 コーチングにおける内省の中で、これまで目標と考えていたものが、実は本当にやりたいものではないと気付いた場合や、上司に嫌われたくないあまりに、本心ではないが取り組んでいることがわかった、といった場合、このまま継続することはできません。

 また、実際、クライアントが上司の望まない方向に進んでいこうとしている時、契約主の上司(会社)に報告しないことはコーチの倫理規定に背きます。透明性を確保しながらコーチとして適切な対応が求められます。

 このように見ると、非常に難しいように感じます。会社の目標ってコーチングの対象にはならないのでしょうか。

クライアントにとって仕事とは have to~、want to~ なんて分けなくていい!

では、クライアントに
「仕事はどれくらい大切ですか」「今の仕事をしている意義はなんですか」
とお伺いすると、仕事そのものにせよ、生活のための手段であるにせよ、それなり以上には大切だ、と答える方が多いです。

 仕事が大事だというクライアントであるならば、上司からの提案がきっかけだとしても、合意した目標に関しては、少なくとも契約の時点では本心から合意していると考えて良いのではないでしょうか。「上司から言われた目標なんだから、”have to~”目標なんじゃないか?”want to~”であっても、”have to~”であっても、本心といえば本心だけど、”have to~”はコーチングの目標としてダメじゃないか」とおっしゃるのであれば、その通りかもしれません。

 でも、”have to~”の先に、”want to~”があるかもしれないじゃないですか。家族の幸せとか、平穏な老後とか、コミュニティへの貢献とか。

 「家族のため、生活のために、とりあえず納得して働ける会社で働いている。自分の夢とか、そんなんじゃないかもしれない。でもさ、もっと力をつければ、もっと給料を稼げる。責任が増えたら、仕事ももっと楽しくなるはずだよ。」

 そう思って頑張っている会社員が、目標に対して本気じゃないと、僕は思えないのです。
 本気で仕事に取り組んでいるクライアントであれば、対話によって、”have to~” の目標を”want to~”に変えられるはずです。ご自身が取り組んでいることで得られるものの価値を言語化できれば、それが上司(会社)の目標であっても、ご自身の目標との重なりや繋がりを見出し、”want to~”の目標になり得ると、私は考えます。
(注:私だけでなく、一般的にそう考えるそうです。上司から同じ目標を与えられたとしても、受け取り方の違いによって「want to」にも「have to」にもなります。)

 さらに言えば、上司の指示ではなく、ご自身でコーチングを受けようと決意されたならば、それはもう、”want to~”の目標と言っていいんじゃないでしょうか。会社の目標であっても、です。

私の経験

私自身もコーチングを受けています。外部コーチで、上司の依頼ではないです。本業のビジネスに関して半年後、1年後の目標を立てています。目標に近づく実感を持ちながら進められるので、仕事が楽しくなってきますね。自分でああしよう、こうしようという計画をつくって、その通りに進めて実現する。会社員ではありますけれど、オーナーシップを感じることができます。仕事が楽しいというのは、コーチングで得られた大きな変化です。

コーチングに出会う前

 コーチングに出会う前は、そうではありませんでした。
 以前私は、”hope to~”と”want to~”が入り混じったような目標や計画を立てていました。こうなればいいなという理想的な結果が、会社が求める営業活動(KPI)によってもたらされる。そういう計画です。
 長年、会社に言われた目標や計画を作ってきました。販売数字は達成することもあればしないこともあります。ですが、自分の目標という気持ちがもてなかったんでしょう、達成したという実感をもつことができませんでした。

コーチングを受けてみたら

 初めてコーチングを受けたとき、目標を立てるのに4回目のセッションまでかかりました。”want to~”がわからなかったんです。それでやっと立てた目標が「半年後に、コーチングを武器にしているマネージャーがいることを本社に知ってもらう」でした。なんとも、慎ましいというか、今思えば、ニッチな目標だったなあと思います。
 しかし一応、その先に、コーチングによるマネジメントを確立したマネージャーになるというビジョンがありました。社内で初めてのコーチング型マネージャーを確立しようと思っていたのです。

 コーチングの対話の中で、これまでにない視点を提供してもらったり、アイデアを実行に移したりしてきました。今までしてこなかった動きもしました。それで、実際に狙ったように物事が動いていきまいました。
 ついに半年後、私がコーチング型マネージャーにトライしていることは、知られるようなりました。それで、私はコーチング型マネージャーへの道を進む足場を築けました。さらにその半年後には、全社のコーチングプロジェクトが発足し、メンバーにも加えられることになりました。もし、本社に名前が知られていなければ、私ではなく、私より経験の長いマネージャーが選ばれていたと思います。

 コーチングによって、自分が描いたように、未来がやってくることを初めて体感しました。頭で考えたことが本当に実現する。この経験から、私は目標を立てるのが好きになりました。今や、目標を立てないと不安すら感じます。人類を火星に!のような大きな目標でなくとも、仕事が楽しいと感じられるようになって、非常に満足しています。

ビジネスコーチングを活かすには

ビジネスコーチングのリスク

さんざん語ってきましたが、やはりビジネスコーチングのリスクは

  • have to~目標になっていないかどうか
  • 上司からの依頼であれば、上司の意志との整合性を維持できるか
  • コーチングの経過に対する透明性を確保できるか

というようなとことになってくると思います。
ですので、もしリスクを避けるのであれば、会社とは関係のないところで外部のコーチを依頼すると良いと思います。

ビジネスコーチングが向いている人

 外部のコーチングであれば、頑張っている人、目指すものがある人みんなです。^^!自分の自由に目標を描けますからね。きっと自分に合った成長の仕方で、目標の達成を体感していただけると思います。
 社内コーチや会社や上司の依頼ということであれば、次のキャリアアップの候補者、リーダー層など、明確に会社と目標を合わせられる人がいいと思います。
 次のステップへの候補者というのは、成熟した会社ならば大体ポストの3倍くらいいると思っていいと思います。ご自身が「そろそろかな、、」と思っても、なかなか声がかからないものです。そこを一歩抜けだせるかどうか、その集団にいながら、さらに成長できるかどうか。そういった部分にコーチングは活かせると思います。 

 今述べたような方々は、だいたい社内では優秀と評価されている方が多いと思います。コーチングが最も適しているのはエグゼクティブです。コーチングの神様といわれるマーシャルゴールド・スミスは「私のコーチングが成果を上げている理由は、成果が上がるクライアントに限定しているからだ」と、堂々と説明し、コーチングの対象を成果が上げられると見込んだエグゼクティブに限定しています。コーチングはコーチとクライアントの双方向コミュニケーション、共同作業で成果を上げていくものなのです。

私はこんな皆さんを応援したい!(涙)

 頑張っている人、皆さんです。
エグゼクティブじゃないし、夢なんかわからない、本当に自分のやりたい事なんて、そんなのとっくに忘れたし(涙)。
 いいんです!
 それでも、家族のため、会社のため、将来の自分のため、に頑張っている人を応援したいのです。そういった方は、すでに貴重な価値を、家族に、会社に、将来の自分に与えています。間違いなく世の中に貢献しているんです。だから、もっと楽しく、誇りをもって仕事をしてほしいと願っています。
 頑張っていて、コーチングに関心をもっていただけるような方は、その時点で主体性が高く、努力を惜しまない、優秀なビジネスパーソンである可能性が高いと思っております。ちょっとした行動変容で自分の思う未来を手に入れる事ができるのではないでしょうか。
 世知辛い世の中ではありますが、ぜひ皆さんと一緒に、楽しく、誇りをもって仕事ができる、そんな未来を実現していきたいと思っております。


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